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NPOと新自由主義 —NPOは公共サービスの担い手になれるか


NPOと新自由主義 —NPOは公共サービスの担い手になれるか

名古屋大学大学院法学研究科教授   後 房雄

 総選挙における小泉自民党の大勝で、日本も20年遅れで本格的な新自由主義の時代に入りつつある。自治体の「公の施設」の管理運営を企業やNPOにも開放した指定管理者制度(2003年)に続いて、行政が実施するほとんどの業務を民間に開放する「市場化テスト」法が来年の通常国会で成立する見通しである。
 社会問題を解決するうえで、政府・行政がもっとも有効な手段と考えられた時代、それゆえ政府・行政の活動が大きくなることが進歩だと考えられていた「大きな政府の時代」は、1980年前後に終わった。それ以後、先進諸国ではGDPに占める一般政府支出の割合は、40パーセント代で横ばいないし微減が続いている。
初期の80年代はいわば「粗野な新自由主義」の時代で、社会問題への対処を犠牲にしてでも政府・行政の縮小が優先された。しかし、その後、社会問題に取り組む手法を変えることで相対的に「小さな政府」をめざす「成熟した新自由主義」が「第三の道」として登場した。社会問題に取り組むうえで企業、NPO、家庭、市民個々人の役割を重視したり、政府・行政自体に成果志向、顧客志向、競争などの新公共経営(NPM)を導入したりする動向である。
 私は、新自由主義は私たちが共有する時代の課題であって、選択肢はその共通の土俵のなかで設定されるしかないと考えるが、日本のNPOセクターは依然として「大きな政府」の残像を引きずり、新自由主義へのスタンスが定まっていないようだ。福祉、環境、多文化共生などの社会問題への関心がそのまま「大きな政府」支持へと直結したり、NPOへの事業委託は肯定するが企業への事業委託は問題視したり、NPOの機能として事業活動よりもアドボカシーを過度に強調したりする傾向が見られる。
 日本でも、事業委託や公的介護保険など「決定と実施の分離」が進行し、政府が経費を負担する公共サービスの担い手としてのNPOの役割が増大している。これをなし崩しの選択にするのではなく、意識的、戦略的な選択にすることが必要である。
 そのためには、約10年前に、80年代のレーガン政権を経たアメリカでレスター・サラモン氏が指摘していた「NPOをめぐる神話」の克服が日本のNPOにとっても急務である。NPOが「純粋な美徳」を備えていると考えるロマンティシズム、NPOが主に寄付やボランティアで成り立っている(べきだ)という思い込み、国家とNPOの間に本質的な対立があると見る考え方などである。特に次の一節に注意を喚起しておきたい。
 「おそらく、非政府組織の成長のカギを握る最大の要素とは、彼らが政府との間にどのような関係を築き上げるかである。つまり、第三セクター組織の課題は、十分な法的・財政的支援を与えることのできる立場にある政府との関係において、自らの独立と自治を損なわない妥当な『生活様式』をいかに見いだすかなのである。」

(『中央公論』1994年10月号)

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